近年の進路状況の傾向
2023(令和5)年度の都立高入試は、新型コロナウイルスに対応した制度や日程になって3年目の入試でした。また、小学校卒業直前の2020年2月末から一斉休校になって以来、新型コロナウイルスに振り回されっぱなしの中学校生活を送った世代の高校入試である点も注目されました。それに加え、英語スピーキングテストの導入、男女別定員緩和の拡大といった都立高入試の変革もありました。2021年度(令和3)年度の公立中学校卒業生のうち、高等学校などへの進学者は75,186人、進学率は98.5%で依然高い水準で推移していますが、都立高校への進学率は前年度より1.2ポイント減の50.5%と都立離れは加速しており、今春(2022年度)卒業者では50%を割り込むこともあり得る状況です。特に専門学科の志望率の低下が激しく、2022年12月の校長会志望予定調査の時点では工業科は0.78倍で前年度(0.87倍)から大きく落ち込みました。「Next Kogyo START Project」と銘打って工業高校の校名変更や学科改編等、魅力ある学校づくりを進めていますが、現時点で人気回復にはつながっていないようです。商業科は0.84倍で2年連続の倍率アップとなったものの、志望者数が募集人員に達しない状況が8年間続いています。農業科は倍率アップ、3年連続で1.0倍台が続いていましたが、4年ぶりに1.2倍台となりました。チャレンジスクールは前年度の1.09倍から1.25倍へと大幅な倍率アップとなりました。都内公立中学校では長期欠席者が前年度の14,479人から20,432人へと大幅に増加しており(文部科学省調べ)、不登校等によって能力や適性を活かす機会に恵まれなかった生徒を受け入れるチャレンジスクールの需要が増してきている様子がうかがえます。一橋、浅草などの定時制単位制も0.74倍(前年度0.70倍)にアップしました。
私立高校進学率は32.9%で前年度から0.5ポイント増、全日制全体としては87.8%で前年度から0.6ポイント減となりました。その一方、通信制志向は強まっており、前年度から0.4ポイント増の5.5%、公立中学校卒業数がほぼ同じだった2012年度と比べると約3.6倍もの人数になっています。全国的に見ても、通信制高校の開校、既存の私立高における通信制過程の新設、既存の通信制高校における通学キャンパスの新設等、通信制高校をめぐる動きは依然活発です。
都立推薦試験
①出願傾向特別推薦を含む推薦入試の倍率は2.47倍で、過去最低だった前年度(2.54倍)からさらに0.07ポイントダウンしました。
集団討論が実施されなくなった2021年度には倍率が上がったものの、それ以外の年度では倍率ダウンが続いています。都立高校第一志望者のうち推薦入試に応募する出願率は47.3%で、この数値は2019年度や2020年度より高いので、都立高校の志望率自体の低下が推薦応募倍率の低下につながっていると分かります。
②高倍率になった高校
男女別募集の普通科でもっとも高い倍率になったのは、男子は片倉で5.54倍、女子は鷺宮で6.42倍でした。男子は次いで小岩と鷺宮4.86倍、東大和4.52倍、東村山4.30倍の順、女子は西5.80倍、富士森5.52倍、小岩5.32倍、広尾5.00倍と続いています。例年高倍率だった青山は、推薦の募集枠を10%から20%に拡大した結果、男子3.10倍(前年度5.93倍)、女子4.62倍(同9.62倍)と落ち着いた倍率になりました。単位制普通科は新宿が5.91倍でトップ、美原の3.75倍が続きました。
専門学科では、総合芸術「美術」が5.33倍でトップ、次いで工芸「デザイン」5.20倍、赤羽北桜「調理」4.90倍、総合芸術「舞台表現」4.42倍、国際「国際」4.24倍と続きました。
③推薦合格者の状況
全日制の推薦合格率は39.7%となって前年度(39.2%)からやや緩和しました。欠席者は70人で前年度(189人)から大幅に減りました。新型コロナウイルスの感染状況が欠席者数に直結したものと考えられます。
普通科男子38.0%(前年度37.4%)、普通科女子31.5%(同31.1%)、単位制普通科35.4%(同32.6%)とそれぞれアップ、コース制は49.0%で前年度(39.2%)から大幅なアップとなりました。工業科の合格率が70%を超えるなど、専門学科も全体的に緩やかな合格率となりました。